エゾマツマツ科トウヒ属Picea jezoensis (Sieb. et Zucc.) Carr.
アカエゾマツマツ科トウヒ属Picea GIehnii Masters
トドマツマツ科Pinaceaeモミ属Abies sachalinensis Masters

北方民族博物館の前庭にあるトドマツ(左)とエゾマツ(右)
 これらの樹は,北海道の針葉樹の代表です。トドマツは、北海道の他サハリン南部、南千島にも分布し、エゾマツは、北海道の他サハリン、朝鮮半島にも分布します。アカエゾマツは、北海道の他、本州の一部(岩手県)、サハリンに分布しています。
 トドマツは,アカエゾマツと,エゾマツと違いクリスマスツリーの木となるモミ属ですが,遠目で見ると,この3種は,似ていてなかなか見分けができません。
 よく,「<天までとどけ>と枝を天に上げているのがトドマツで,<枝が下がっている>のがエゾマツだ」と言っている人もいます。しかし,確かにそういう木もありますが,いろいろ見てみると,例外がたくさんあって,この見分け方は,あまり良くないようです。
  [アカエゾマツ,エゾマツ]と,[トドマツ]の見分け方で簡単なのは,幹の木肌を見ることです。[アカエゾマツ,エゾマツ]の幹(左の写真、エゾマツ)は,樹皮がガサガサとはりついていますが,トドマツの幹(右下の写真)の木肌は,つるっとした灰色でまるで厚手のビニールを巻いたような感じで横方向の模様と凹凸があります。老木になるとドドマツもややガサガサしたものもありますが,全体をよく見ると,この特徴を見つけることができます。
 “エゾマツ”は,北海道の木に認定されていますが,これは,アカエゾマツと,エゾマツ(クロエゾマツ)を含めての呼称だそうです。そんなこともあって,私はこの二種が別種ではなくて,単に少し幹が赤みのあるものがアカエゾマツと呼ばれ,幹が黒ずんでいるのがエゾマツ(クロエゾマツ)だろうと勝っ手に思いこんでいました。しかし,これを書くに当たって,詳しく調べてみると,この二種は同じトウヒ属でかなり近い種類ですが,立派に別種であることがわかりました。
 網走で最も多く見られる針葉樹は,カラマツで,その次に多いのがトドマツです。その次に多いのがアカエゾマツで,たぶんあちこちにあるだろうと思っていたエゾマツは,実際に調べてみると、あまり多くはありません。朝日新聞社編『北方植物園』(朝日新聞社1968)によると,「いま北海道内にあるエゾマツの量はアカエゾマツの十倍近いが,造林の苗木養成の率は逆にアカエゾマツの十分の一になっている。これはエゾマツが開芽がはやく晩霜の被害にかかりやすいこと,さらに乾燥や,過湿に弱い上,アカエゾマツにくらべてみると病虫害や野ネズミの害にやられやすいからだ〜」とあります。山岳地では,自然にエゾマツの方が多いのかもしれませんが,植林された市内にものはほとんど植林されたもののため,ほとんどがアカエゾマツなのでしょう。
 北海道棒民族博物館の入り口には,トドマツと並んでエゾマツの大木があります。すぐ近くの駐車場わきには,アカエゾマツもありますから,比較するにはもってこいです。
 
 エゾマツは,クロエゾマツとは,とてもよく似ているのですが,よく見ると,葉も幹も実(まつぼっくり)もみんなはっきり違い,その部分だけでも見分けることができます。
 エゾマツは,クロエゾマツとも呼ばれ,その幹肌は,やや黒っぽいく亀甲状の割れ目で覆われており,アカエゾマツの幹は,少し赤みを帯びガザガサとしているので慣れると分かります。でも、これだけでははっきりしないので、葉の断面を見ると、その違いがはっきりします。
 エゾマツの葉の断面は,平たいですが,アカエゾマツの方は,菱形をしています。さわってみると,エゾマツの方が柔らかく,アカエゾマツの方はチクチクします。アカエゾマツは,断面が菱形なため,一見マッチの軸のように見えます。エゾマツの葉の裏面には,白く小さな気孔線がたくさんがあって一面が小さな白いヅブヅフ模様で覆われ,遠目で実ても,アカエゾマツ,トドマツに比べ葉が白っぽく見えます。
 葉の大きさも違い,エゾマツの方が大きめで1p〜2pくらいあります。それに対しアカエゾマツの方は,その半分くらいしかありません。
 エゾマツの葉は,柔らかく,枝に付いた葉は棒アイスキャンディのような感じ丸く見えます。下の写真で手前がエゾマツ、奥がアカエゾマツです。アカエゾマツの方は,とげとげしく見えます。これは,かなり遠くからでもわかる特徴ですが,遠くから見た感じはトドマツの葉と似ていますから,幹で確認すると良いでしょう。


 トドマツの葉先は,二つの分かれていますが,これはモミ属の特徴だそうです。










 実(まつぼっくり)も,この三種は,はっきり違います。
 エゾマツ・アカエゾマツは,まつぼっくりが枝に下向きにできますが,トドマツは上向きにできます。エゾマツのまつぼっくりは,アカエゾマツのものより柔らかい感じがします。アカエゾマツのまつぼっくりは,最初は固く閉じていますが,乾燥すると,松かさがそって,二倍くらい太くなります。
 トドマツのまつぼっくりは,樹上でバラバラになることが多いので,樹下でそのまつぼっくりを見つけることがほとんどできません。上のトドマツのまつぼっくりは,かなり探してみつけたものですが,すでにかなりボロボロになっていました。
 アカエゾマツの大きな木があるのは,雄阿寒岳で,直径が1mを超すようなものが登山道脇にみられます。また,川湯ビジダーセンターの裏手には,きれいなアカエゾマツ林が広がっています。                                               (H) 

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