日脚(ひあし)が伸びる 2004.3.13
室蘭の吉田さんからこんなメールが届きました。
【吉田】
「このごろ「回帰線」とか「太陽高度」とかが気になって仕方がないなのですが…… (春分の日には,太陽の南中高度を ぜひ測ろうと考えています。この高度がわかれば,自分の居るところの緯度が わかるはずなんです……多分)
けさ 北海道新聞を見ていたら「札幌の三月の初めと終わりの昼の長さは,約1時間半も伸びる。一年で日脚の伸びが最も大きく,「光の春」とされる由縁だ」と 書いてありました。
ええっ!季節によって昼間の長さの変化が,ちがうノッ!! 「1年間を通して一定の割合で夜昼の変化がおきる」とばっかり思いこんでいた僕には のけぞるほどの 驚きでした。 なんでそうなるのか,今朝から地球と太陽が頭の中で グルグルまわっています(^^;)
「春が どんどん昼が長くなるなら,多分 秋がドンドン短くなるんだろう。変化をグラフに描いたら,サインカ−ブみたいになるんじゃないか」と 勝手に推測してみたりもしています。 さてさて,なんで3月は「日脚が伸びる」のでしょうか?
【林】゜
実は、ぼくは日脚と言う言葉は、知りませんでした。ヒキャクと読むのですか?
【吉田】゜
国語辞典でひいてみました。
「日脚・日足」ひあし
1.太陽の東から西へ移動すること。またその速さ。
2.昼間の時間>
とありました。
「やまとことば」なのかもしれません。
【林】
なるほど! ぼくが知らなかっただけで、「日脚がのびましたねぇ−」とか、日常会話で使うのかもしれませんね。ATOKでひらがな漢字変換もできました。
うまく、説明できるかどうかわかりませんが、「日脚の伸びる」イメージとしては、次のようなものです。
天動説的現象論的説明
日中の時間は、太陽高度ず高くなるほど、長くなります。夏至の時が一番長いのです。でも、夏至のころの日脚の伸び(太陽高度の変化)は、ほとんどないのです。でも、春分、秋分のころの太陽高度の変化は、大きい。 これは、天動説的現象論的説明です。
地動説的説明
地動説的説明は… ウ〜ん。難しい! これは、本などで私はまったく見たことがありません。これは、難しい! 数学の世界か?!
しばらく考えて、やっとわかりました。太陽の周りを回る地球は、約23.5°傾いて自転しています。この軸は、周期約2万6000年でゆっくり、ゆっくりと、「コマの首振り運動」と、同じように回っています(「日月歳差」と呼ばれる現象です)。この軸の延長線上にたまたまある星が北極星と呼ばれ、長い年月の後には、ちがう星が北極星になります。8000年後には、はくちょう座の1等星デネブが北極星と呼ばれることになるでしょう。
しかし、10年や100年では、ほとんど問題にならない動きです。
日常的には、この軸の方向は、いつも一定で、この地球の傾きが季節(日脚が伸びたり縮んだり)の原因です。
季節の原因
下の図左の所に、地球が来ると、北半球にたくさん太陽の光があたり、北半球は、夏となります。北極には、いつも太陽の光があたり、夜はありません。一方南極は、太陽の光がまったくあたらず、夜ばかりです。
右の位置に地球がくると、こんどは、逆に北極には、太陽の光がまったくあたらず、夜ばかりです。南極は、太陽の光があたり、いつもあたり夜はありません。日本あたりも昼より夜の方がながくなり、冬となります。
春と秋には、その中間で、太陽の光は、世界中あたり、夜と昼が同じ時間となります。
この太陽の周りを回る地球から見た、太陽の高度を知りたいのですが、簡単にイメージできるよう、公転を無視して、太陽から見た、公転している時の地球の傾きだけを考えてみることにしましょう。(太陽から、地球を追いかけてビデオに撮るイメージです)
すると、これは丁度、下の図の様に、1年で、こまが傾いてグリグリと回っているのと同じように見えます。
発泡スチロール球の竹串を刺して、地球の模型を作り、分かったのですが、
冬至、夏至のころ(図右)は軸の傾きの変化は主に横方向で、これは太陽高度に影響が少ない。けれども、春分・秋分のころ(図左)は、前後手前の方向でこれは、まともに太陽高度に影響します。
吉田さんの質問のおかげで、「どうして、春に日脚が伸びるのか」、地動説的イメージを持てるようになりました。「ありがとう」と言いたいです。
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